【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「おお! 髪、切ったんだ! せっかくかっこいいんだから、その顔隠してちゃもったいないよね」
小坂は開口一番、俺の変化に気づいて褒めてくれた。
お世辞とはいえ、かっこいいなんて言われたのは初めてで、背筋がぴんと伸びてしまう。
「ああ、今日切ってきて」
少しでも君に相応しい男になりたくて。
……なんて、口が裂けても言えないけれど。
「今日は映画だったか?」
「うん。ずっと観たかった映画があってね。“ポチと私の100日”っていう映画なんだけど」
小坂の言う映画は観たことがあった。
学校帰りにひとりで映画館に観に行ったのだ。
こう見えて動物のハートフルストーリーに滅法弱い俺は、例によって大号泣した。
すごくいい映画だったから、小坂も気に入るに違いない。
大号泣している小坂の姿は容易に想像がつく。
それにしても、映画を観に行ったのはだいぶ前のことだから、今もまだ上映しているというのが驚きだった。
「楽しみだな」
「うん!」
うきうきとした小坂と連れ立って、俺は改札を通った。