【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
あ、と思った時にはもう遅い。
俺はブレーキの利かない車に乗り込んでいた。
「小坂さえよければ、付き合ってほしい」
愛の言葉が、まるで死の宣告となって小坂に届いているかのような錯覚を起こす。
見開かれた小坂の瞳を覆う膜が揺れる。
震える唇が開くのを、俺はただ黙って見つめることしかできなかった。
「私は、榊くんのこと、好きじゃない……」
そして――、
「ごめん」
それだけ言うと、小坂は踵を返して足早に歩き出す。
「小坂……」
俺は小坂の背中が遠ざかっていくのを、ただそこに立ち尽くして見ていることしかできなかった。
さらさらと手のひらから砂がこぼれて、それを掴み取ることができない感覚に似ている。
どうして彼女が泣いていたのかわからない。
でももう取り返しがつかない。
今までの関係には戻れないことだけは明白だった。