【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ




スニーカーをつま先に引っ掛けながら玄関を出ると、家の門の前にその姿はあった。

俺のことを認めると、紗友はブロック塀に寄りかかっていた背中を離して俺に向き合う。

お気に入りだと言って何年も使っている白い水玉模様の傘に雪が積もっている。


『悠心、おはよう』

『おはよ』

『ふふ、寝ぐせついてるよ』


紗友が背伸びをして俺の寝ぐせを直してくれる。

俺たちの間ではよくあるやりとりだった。


『さんきゅ』


紗友が傘の中に入れてくれて、身長の高い俺が傘の柄を持つ。

ふたりで歩幅を合わせて歩き出すと、紗友が緩めた瞳で空を見上げて、うきうきと弾んだ声をあげる。


『雪だねぇ』

『だな』

『だなって。悠心ははしゃがないの? 雪が降ってるっていうのに』

『だってさみぃし』


文句を言うように呟いて、マフラーに顔を埋める。


冬は苦手だ。

寒いのが得意ではないから、ずっとこたつに入ってじっとしていたい。


けれど冬を嫌いになれないのは、紗友が雪が降るとはしゃいで喜ぶから。

……その笑顔が好きだから。
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