【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

横断歩道が見えてきた。


『いい話? 悪い話なのか?』

『んー、どっちでしょう』

『楽しみにしとく』


信号は青だ。

目に映るその青色をなんの疑いもなく信じて、横断歩道に足を踏み込んだ、その時。


異変を感じたのは、横断歩道の手前で止まるはずのエンジンが、一切緩まずに近づいてきたから。


え、と思い反射的にそちらに顔を向ければ、猛スピードで迫りくる大型トラックが目に飛び込んできた。


――ドンッ。


その瞬間、経験したことのないほどの衝撃が体を襲い、体が重力に逆らうように飛ばされた。


視界がスローモーションのように回転する。

ちらほら降っていた雪が、縦横無尽に舞う。

紗友のお気に入りの水玉模様の傘が飛ぶ。


そして、再び体を覆う衝撃。


投げ出された横断歩道の白線の上に、変な方向に曲がった腕と血が落ちている。


そして力を振り絞って反対側に顔を向ければ、紗友が倒れている。

頭から血を流した紗友は目を閉じて動かない。


『さ、ゆ……』


お願いだ。頼むから、目を覚ましてくれ。


神様がいるなら、紗友を助けてくれ。

俺はどうなってもいいから紗友だけは――。


『おい、高校生がふたり轢かれたぞ! 早く救急車!』


だれかの声が、ぐわんぐわんとエコーがかったように聞こえてくる。

そこで俺は意識を失った――。





< 125 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop