【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
横断歩道が見えてきた。
『いい話? 悪い話なのか?』
『んー、どっちでしょう』
『楽しみにしとく』
信号は青だ。
目に映るその青色をなんの疑いもなく信じて、横断歩道に足を踏み込んだ、その時。
異変を感じたのは、横断歩道の手前で止まるはずのエンジンが、一切緩まずに近づいてきたから。
え、と思い反射的にそちらに顔を向ければ、猛スピードで迫りくる大型トラックが目に飛び込んできた。
――ドンッ。
その瞬間、経験したことのないほどの衝撃が体を襲い、体が重力に逆らうように飛ばされた。
視界がスローモーションのように回転する。
ちらほら降っていた雪が、縦横無尽に舞う。
紗友のお気に入りの水玉模様の傘が飛ぶ。
そして、再び体を覆う衝撃。
投げ出された横断歩道の白線の上に、変な方向に曲がった腕と血が落ちている。
そして力を振り絞って反対側に顔を向ければ、紗友が倒れている。
頭から血を流した紗友は目を閉じて動かない。
『さ、ゆ……』
お願いだ。頼むから、目を覚ましてくれ。
神様がいるなら、紗友を助けてくれ。
俺はどうなってもいいから紗友だけは――。
『おい、高校生がふたり轢かれたぞ! 早く救急車!』
だれかの声が、ぐわんぐわんとエコーがかったように聞こえてくる。
そこで俺は意識を失った――。