【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
紗友に連れられてやってきたのは、近所の公園だった。
公園といっても小さい子どもが遊ぶような遊具はなく、広い敷地に砂利が敷かれ、あずまやがぽつんと立っているだけ。
紗友は雪の積もった鉄棒にそっと手を添えて、俺を振り返る。
「多分、悠心の思い出したとおりだよ」
振り返りざま、紗友がとても自然な響きで俺の名を呼ぶ。
もうずっとそう呼んでいたかのように。
空白の期間など存在していなかったように。
「私と悠心は幼なじみ。去年の冬に起きた事故で私は死んで、悠心は私に関する記憶の一切を失った」
“死んだ”――紗友の口から語られると、改めて逃げ場のない現実を突きつけられるようで、胸が圧迫される。
でもだとしたらなぜ目の前に紗友が立っている?
触れることができる?
言葉にならない疑問が喉の奥につかえていると、心の中を読んだように紗友が答えをくれる。
「不思議だよね。あの時死んだはずの私が、なんでこうしてしゃべってるんだって思うでしょ?」
紗友はまっすぐに俺を見上げてきた。
その瞳の奥に揺るぎない意志を秘めて。
「それはね、ここが悠心の夢の中だから」
「え?」