【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。
いや、数秒かかっても、かみ砕き理解するまでには至らなかったかもしれない。
頭を後ろから殴られたような衝撃が走る。
急激なめまいに襲われて、今自分がまっすぐ立っているかもわからなくなった。
「6日前川に飛び込んだ時から、ずっと夢の中なんだよ。あの時、悠心は本当は助からなかった。悠心の本当の体は今も意識を失って、病院で治療を受けながら眠り続けてる」
しんしんと降り続ける白銀の雪が、紗友の頭の上にもふわりと落ちる。
雪が降っているのに、なぜかちっとも寒くない。
「私は悠心を助けたかった。だから悠心の夢の中に入り込んで、君に出会ったんだよ。生きることは難しいけど、美しくて幸せなことでもあるって、この7日間で悠心に知ってほしかったの。昏睡状態から目覚めるためには、悠心の生命力が必要だった……。だからもう一度生きてみようって思ってもらえるように」
にわかには信じられない話だった。
今この時こそ夢の中だとけりをつける方が、よっぽど楽だ。
けれど。
「なんて……、こんな話突然聞かされたって信じられないよね」
ふっと嘲笑を浮かべた紗友を一蹴することなんてできなかった。
「うそ……じゃないんだな」
紗友はたまに嘘をつく。
けれどそれはきまって俺を喜ばせる時だけ。
俺を困らせるような嘘を紗友がつくはずがないことを知っている。
なにより紗友の瞳が、すべて真実なのだと証明していた。
川に落ちたあの時、どこかから俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
あれはきっと紗友の声だったのだ。