【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
凪いだ水面のような紗友の瞳に、なにかがきらりと光ったように見えた。
けれどその動揺とは裏腹に、言葉を淡々と並べていく。
いつでも俺に話せるよう、ずっと前から心の準備をしていたみたいに。
「だから明日でもうお別れしなきゃ。悠心は生きてる。悠心が生きたいと思う世界に、私は一緒に行けない」
どくんっと壊れそうなほど心臓が大きく跳ね上がる音が、体全体を揺らす。
「……なんで、なんでそんなこと言うんだよ……」
やっと口から出た言葉は、情けないほどに掠れてよれよれだった。
「生きてる悠心とは一緒にいられないの。目を覚まして戻らないと、元いた場所に」
俺は紗友の薄い肩を掴んだ。
舞い落ちる雪が、時折俺の視界を遮る。
その一瞬すら紗友を見逃すのが惜しい。
「だったらこのままでいい。ここにいる。一生目を覚まさなくたっていい」
聞き分けのない強情な子どもになったよう気がした。
けれど恰好なんて気にしている余裕はない。