【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
そんな俺に対して、紗友は冷静だった。
……いや、違う。睫毛が震えている。
「違うはずだよ、本心は」
「そんなのどうでもいい」
「どうでもよくない。私は悠心に生きてほしいの」
「……紗友のいない人生を生きろっていうのかよ」
紗友が笑った。
こんな時なのに、なんでそんなに美しいんだろう。
「生きて。生きて、私が見れなかった景色をたくさん見て、私の分も幸せになって」
淡く儚く微笑んだ紗友が涙声でそっと俺の背中を押す。
「笑っていて、悠心」
「そんなの……反則だろ……」
こらえきれない感情に突き動かされるようにして、俺は紗友を抱きしめた。
俺の心の中にあるのは、残酷すぎる真実。
……そうだ。紗友のせいで俺は生きたいと願ってしまった。
生きる難しさも喜びも知ってしまった。
君がモノクロだった世界に色をつけてしまった。