【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

そんな俺に対して、紗友は冷静だった。

……いや、違う。睫毛が震えている。


「違うはずだよ、本心は」

「そんなのどうでもいい」

「どうでもよくない。私は悠心に生きてほしいの」

「……紗友のいない人生を生きろっていうのかよ」


紗友が笑った。

こんな時なのに、なんでそんなに美しいんだろう。


「生きて。生きて、私が見れなかった景色をたくさん見て、私の分も幸せになって」


淡く儚く微笑んだ紗友が涙声でそっと俺の背中を押す。


「笑っていて、悠心」

「そんなの……反則だろ……」


こらえきれない感情に突き動かされるようにして、俺は紗友を抱きしめた。


俺の心の中にあるのは、残酷すぎる真実。


……そうだ。紗友のせいで俺は生きたいと願ってしまった。

生きる難しさも喜びも知ってしまった。

君がモノクロだった世界に色をつけてしまった。
< 130 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop