【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「ごめんな、あの時助けてやれなくて……」
今こうして抱きしめることのできる小さい体と温もり。
けれどそれは永遠ではないのだ。
隣にいたのに守ってやれなかった。
永遠にあの冬の日に閉じ込めてしまった。
俺の責任だ。
すると俺の肩口に半分顔を紗友がふるふると首を横に振る。
「悠心が罪悪感を覚えることなんてないんだよ」
「でも俺、紗友のこと覚えてもなかった……。ごめんな、怖かっただろ……」
俺はきっと紗友がいない日々を信じることができなくて、自分を守るために記憶を消したのかもしれない。
紗友はいったいどんな気持ちで、なにも覚えていない俺との時間を過ごしてきたのだろうか。
初めて出会ったふりをして。
榊くん、なんて他人行儀な空気を作って。
それなのに紗友はいつも笑っていた。
こんな大きな秘密をひとりで抱えながら、時には俺を支え、時には痛みを分かち合いながら、俺の心を照らすように俺の分も笑ってくれていた。
違和感を抱かせる隙も作らせずに。