【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

「それは事故のせいだから仕方ないよ。申し訳なくなんて思わないで。それにね、私は怖くなんかなかったよ」


紗友の声はとても優しくて、俺の心にじんわりと染み入る。

いつだって気丈な紗友がそこにはいた。


「大きくなったら家族になってずっと一緒にいようって言ってくれたこと、覚えてる?」


思い出した。

あれは小学生になって間もない時のこと。

両親が離婚し、父親を失った紗友に掛けた言葉だ。


『家族になろうって言ってくれた人がいてね。それがすごく嬉しくて。その人のことを一生大事にしようって決めたの。私、早く大人になりたかったんだ。大切な人を守れる大人に』


ついこの前その話を聞いた時は遠い話に感じていたけど、それは他の誰でもない俺のことだった。


「なにげない一言だったのかもしれないけど、すごく嬉しかった……。その時から、悠心を守ることが私の人生の一番の道しるべになったんだよ」


臆面もなくそう言い切る紗友。

その言葉のとおり、こんなに小さい体で紗友は俺のことを守ってくれていた。


息が詰まり、きゅうっと胸が絞り上げられるような感覚に襲われた。


こんなにも愛おしい。

それなのに目を覚ましたら、君はもう隣にいない。
< 132 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop