【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

「でもね、私、寂しくないよ。悠心が抱えきれないくらいたくさんくれたから。嬉しい言葉も、きらきらした思い出も。もう充分すぎるくらい幸せ。どんなにつらい結末が待っているとしても、やっぱりこうしてもう一度出会えてよかったと思えるのは、悠心のおかげだよ」


その声の深層に、紗友の決心が見えた。

今日を明るく笑顔で過ごそうとしている、健気な決心が。


なにか言うべきだったのかもしれないけど、なんて言うべきかわからなかった。

どんな言葉を口にしたとしても、情けないほど声がよれよれになってしまうことは目に見えていた。


紗友には明日がない。

その容赦のない事実が立ちはだかって、打ちのめされそうになる。


なんで同じ思い出を積みあげていけないんだろう。

なんで明日も一緒にいられないんだろう。

なんで一緒に年を重ねられないんだろう。


俺は次から次へと溢れる理不尽を噛み殺すように、俺は紗友の手を握る手のひらに力を込めた。


一秒の空白すらも惜しかった。





< 138 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop