【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「楽しかった〜!」
両手を大きく空に伸ばしながら、紗友が満足感に満ちた声をあげる。
「それはよかった」
「暗くなってからの遊園地も趣があって綺麗でいいね。夜の遊園地なんて初めてだなぁ、私」
「俺も初めてだ」
「悠心も?」
「俺の初めては紗友だらけだよ。紗友に出会わなかったら、俺は一生人を愛することも知らずに、心が空っぽな人間になっていたと思う。今の俺は紗友が作ったんだ」
生きることもだれかを愛することも、痛みや間違いがつきもので、難しい。
けれどそれ以上に美しくて楽しいということを教えてくれたのは、だれでもない、紗友だ。
「悠心……」
紗友の頭にぽんと手を置く。
「ひとりの人生丸ごと変えちゃうくらい、紗友はすごいってことだ」
こちらを見上げてくる紗友の瞳に映った俺の輪郭がぼやける。
けれど紗友はそれを、明るく持ち上げたトーンの声でかき消した。
「ありがと、悠心。次はコーヒーカップにでも乗っちゃう?」
「そうだな」
紗友が手を差し伸べてくる。
俺たちは手を繋ぎ、キラキラと光を放つアトラクションエリアに向かって歩き出した。