【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
夕食は露天でホットドックを買い、パラソルテーブルで食べた。
向かいに座った紗友がぱくっと大きな口で頬張り、「ん! おいし~!」と頬に手を当て美味しさを噛みしめている。
そんな紗友を見て、俺は思わずくすりと笑っていた。
表情いっぱいで感情を示す紗友を見ているのは飽きない。
新鮮な発見をしたような気になる。
ホットドックを持って手が塞がっているため、心の中のシャッターを押し、胸の中に刻み込む。
露店の近くの席を選んでよかった。
ここなら明るいから、紗友の表情を見逃さないで済む。
「紗友はいつもおいしそうに食べるよな」
「そうかな?」
「ああ。可愛い」
「えっ」
ぼんっと音を立てるように、紗友の頬が赤く染まった。
そして髪を耳にかけながら視線を伏せ、小さな声で抗議してくる。
「私の心臓を止める気なの? そういうこと、そんなさらっと言わないでよ」
耳に髪をかけるのが紗友の照れた時の癖だということを今更思い出した。
俺は涼しい声で返す。
「紗友だってすぐ言うだろ」
「私はいいの」
紗友がそう言い返したところで目が合い、不毛なやりとりが始まると気づいた俺たちは思わず吹き出すように笑い合った。
「なんだかバカップルみたいだね」
「だな」
……ああ、なんて満ち足りた時間なんだろう。