【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
ひとしきり笑い終えた後で、俺は紗友の瞳を正面から見据える。
俺の決意を君に聞いてほしかった。
「なぁ、紗友」
「ん?」
「高校を卒業したら家を出て、バスケのコーチライセンスをとろうと思う」
思いを乗せた声が届くと、紗友は柔く目元を緩めた。
「嬉しいな。悠心が未来の話をしてるのが。きっとすごくいいコーチになるよ」
迷いなくそう言い切ってくれる紗友が、未来に向かって背中を押してくれる。
紗友がそう言ってくれるなら、何者にだってなれる気がした。
「頑張ってみるよ」
君にいい報告ができるように。
君に胸を張れる大人になれるように。
すると紗友が綺麗に口角をあげて、嬉しそうに笑んだ。
「じゃあ、勝負は私の勝ちだね」
――『勝負だよ。死にたい君と、君を死なせない私で』
“出会った”あの時、紗友は俺にそう言った。
ああ、俺の負けだ。完敗だ。
「ほんと、敵わないよ、紗友には」
微かに震えた声が、賑やかな園内のポップな音楽に溶けていった。