【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
園内屈指の人気を誇っていることもあり、観覧車の前には列ができていた。
目の前のカップルたちが次々とゴンドラに乗り込んでいき、いよいよ俺たちの番になった。
ゆっくり到着した空色のゴンドラに紗友が先に乗り込む。
係員が外から扉を閉めると、ふたりきりの世界になった。
窓の外に広がる景色がだんだんと小さくなっていく。
電飾で彩られた遊園地が一望できるようになった頃、
「……幸せだな」
紗友がぽつりとこぼす。
じんわりと温もりに満ちた声に、窓の外へ向けていた視線を正面に座る紗友の方へ向ける。
紗友は窓の外に視線を向けていた。
その瞳に、目の前の景色を懸命に刻み込んでいるかのように。
「最後にこんな綺麗な景色を悠心と見られるなんて」
さっきまではしゃいでいたそれとは、声音が違う。
唐突に紗友の口から放たれた“最後”という言葉に、心臓が大きく揺さぶられ、ひどい息苦しさを覚えた。
それから紗友がゆっくりとこちらを向き、視線が交わった。
さっきまでずっと目を合わせていたのに、それがひどく久々な気がしてしまう。