【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「私の心は持っていっていいよ。全部、あげる」
うっかり気を抜けば、嗚咽を漏らしてしまいそうだった。
下唇を噛みしめ、そしてそっと体を離す。
目の前には、涙にぐちゃぐちゃに濡れた愛おしい君がいる。
俺は紗友の頬を濡らす涙を、両の親指で拭う。
ああ、やっぱり紗友を笑顔にできる力がほしい。
「笑って、紗友」
すると紗友は笑った。
涙をこらえて、くしゃりと顔を歪めながらも淡く儚く微笑む紗友。
消えゆく火花のように最後の力を振り絞って光る紗友を、眩しく、綺麗だと思った。
温度を馴染ませるように額を重ねると、紗友が口元に笑みを乗せたまま震える瞼を閉じる。
その拍子に、押し出されるようにしてぽろりと透明なしずくが頬を伝った。
目を閉じたら、きっとすべてが終わる。
そう予感して、俺は紗友にならうように、ゆっくりと目をつぶる。
紗友の笑顔が、溶けていく。そして。
「――愛してるよ、悠心」
紗友の声が鼓膜を揺らした途端、まるで電源プラグをぶちっと引き抜いたように、突然果てのない暗闇に包まれた。
……俺もだよ、紗友。
どんな言葉で飾り付けても足りないくらい、君を愛してる。