【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
その名を口にした途端、悠樹のぱっちり二重の瞳がいっそう大きく見開かれる。
「もしかして思い出したの?」
「ああ」
「よかった。去年の冬、事故に遭って頭を打ってから、紗友さんの記憶をずっとなくしてたんだよ」
「紗友は今、どこにっ……」
俺は酸素マスクを外し、鉛のように重い上体をむりやり起こす。
するとすぐさま悠樹が俺に駆け寄り、支えてくれる。
「大丈夫?」
「ああ。それより紗友は……?」
「紗友さんはあの事故で……」
沈痛な色が、悠樹の顔を歪ませる。
その先は言わずともわかった。
その時、ふと。
――正体はわからない。
けれどなにか漠然とした嫌な予感が心に迫ってきているような気がして。
俺は震える手で、俺を支えてくれている悠樹の腕を縋るように掴む。
「俺のスマホはあるか?」
「うん」
防水仕様だったから、スマホは無事でいてくれたらしい。
1週間ぶりに目を覚ましたスマホをを急かすように操作して、写真フォルダを開く。
そこには、景色や動物の写真の他に、紗友が写った写真が――ない。