【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
どんなにスクロールしても、紗友が写った写真が一枚も出てこない。
紗友がいた痕跡が、軌跡が、なにもない。
さっきまであんな近くにいたはずなのに、まるで手で掴めない霧のように紗友は消えてしまった。
目の前に提示された現実に叩きのめされそうになる。
あの7日間は全部、本当に夢だったのかもしれない。
紗友が話してくれたことだとか、紗友が俺に見せてくれた笑顔だとか、紗友と見た景色だとか、紗友と積み重ねた思い出だとか。
それらは全部全部、俺が勝手に創りあげた幻想や妄想の類だったのかもしれない。
都合のいい夢でしかなかったのかもしれない。
だって、紗友が存在した証拠なんてない。
視界を影が覆って暗くなっていく。
心の中で大切ななにかが音をたてて崩れていき、自分を保っていられなくなりそうになった、その時。
「あれ、兄さん」
悠樹の声が暗闇を切り裂いた。