【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
そっと目を開けた俺は、両手を離して、おばさんに向き合う。
おばさんは一人娘の紗友を喪って、どれだけ悲しみに暮れたのだろう。
いまだ沈痛な色が滲む瞳に、彼女の絶望と悲しみの深さを知る。
「すいませんでした。来るの、遅くなって」
正座したまま頭を下げると、おばさんはゆるゆるとかぶりを振る。
「そんなことないわ。きっと紗友はあなたのすぐ近くにいたはずだから」
力ないその動きとは相反して、おばさんの声はまっすぐに俺の心を射てくる。
まるで揺るぎない確信が、一本の芯としてあるように。
「え?」
「紗友は、本当に悠心くんのことが好きだったのよ。寝ても覚めても、って言うのかな。紗友の話題は、いつだって悠心くんのことばっかり。悠心くんのことを話している時はいつだって目をキラキラさせてね」
時折声を詰まらせながら、そう語るおばさん。
きゅうっと、まるで柔らかい真綿で心を絞めつけられているようだ。
目の奥に迫る熱い涙の予感に、俺は鼻で大きく息を吸う。