【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
吐き出した声がよれよれになろうと、もう構っていられなかった。
「俺じゃなくて紗友が生きてたらって何度も考えました。あの時助けてやれていたら……」
押し殺しきれない後悔をぶつけるように、固く握ったこぶしで膝を叩く。
するとおばさんが、ぴしゃりと俺の心を叱咤する。
「そんなことは絶対に考えないで。紗友に怒られるわよ」
――『悠心が罪悪感を覚えることなんてないんだよ』
おばさんの声に続いてあの日の紗友の声が耳の奥で甦る。
それなのに俺は、紗友が生きられなかった明日を自ら捨てるような真似をしてしまった。
紗友はどんな思いで俺を救ってくれたのだろう。
そう思うと胸が張り裂けそうだ。
おばさんが遠い目で仏壇を見やる。
それから静かに綴られていく一音一音には、紗友を喪ったおばさんの深い悲しみが滲み出ていた。
「紗友には、家の事情で寂しい思いをさせたって後悔した。それでも悠心くんがずっと隣にいてくれたおかげで、紗友は救われていたのよ。私もね。母親の私でもできなかったことを、悠心くんはしてくれた」
「そんな、俺は……」
「あの子に対して、いつでも態度を変えなかったでしょう? かわいそうだって目で見なかったのは悠心くんだけだって。悠心くんは優しくて、さりげなく寄り添ってくれるんだって。あの子、そう言ってたわ」
君はいつだってそうだ。
俺のことを過大評価し過ぎなんだ。
心の中でそう責めるけど、それはすぐに途方もない切なさに覆い尽くされる。
だって俺は、そんな紗友の言葉に生かされていたのだから。
まっすぐ胸に届く紗友の言葉は、いつだって背中を押してくれたし、俺の心を強くしてくれた。