【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
――なにもない俺が、たったひとつ誇れたものはバスケだった。
小学生の頃からバスケクラブに所属し、中学時代にはバスケ部のエース番号を背負い全国大会に出場した。
けれど去年の冬、交通事故に遭って足を怪我し、選手生命を絶たれた。
そしてバスケから離れざるを得なくなり、決まっていた高校推薦の話も白紙になった。
たいして頭がいいわけでもなく取り柄もない俺にとって、バスケだけが俺の価値だった。
バスケがあったから、優秀な家族の中にいてもいいんだと思えたし、学校でも認めてもらえた。
けれど俺のすべてだったそれを失った今、俺の価値も居場所もなにもない。
残ったのは奈落の底に落とされたような絶望感、まわりに対しての劣等感と羞恥心だけ。
あの日からずっと、額に不用品のレッテルに貼られ、出口のない暗闇に閉じ込められている。
だから全部父の言うとおり。
端から反論する気なんてなかった。
俺には無様にも尻尾を巻いて逃げることしかできない。
俺は行き場のない感情を押し殺すようにこぶしをぎゅっと握りしめると、その場から立ち去った。