【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「兄さん!」
リビングから出た俺の背中を、一筋の細い声が追ってきた。
振り返れば、おろおろとした表情の悠樹が立っていた。
「どうした、悠樹」
悠樹と俺は、才能だけでなく顔も似ていない。
父に似た俺と、母に似た悠樹。
常に怒っていると勘違いされる強面の俺なんかとは違い、悠樹は端正な顔立ちだ。
絵本に出てくる王子のような容姿から、女子からも人気があるらしい。
悠樹は言いづらそうに口ごもり、それから眼差しをあげて俺を見つめてきた。
その瞳の奥には、ひたむきな意志がこもっていて。
「さっきの父さんの言い方はおかしいと思う。バスケができなくなったのは兄さんのせいじゃない」
悠樹はいつも俺の肩をもってくれる。
家族の中で悠樹だけは、俺の存在を認めてくれる。
俺にとって、守らなければいけない大切な存在だ。
けれど、心の端っこがちりりと焦げるような感覚を覚えたのを見逃せなかった。