【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
◇ たそがれ
ジャカジャカと、まわりの音をかき消すほどの爆音が流れるヘッドホンを着けたまま登校する。
これは、暗に関わらないでほしいという意思表示でもあった。
こうしていればわざわざ声をかけてくる人もいない。
俺の目論見通り、教室に入ると視線は集めたものの、話しかけにくるような猛者はいなかった。
窓際の席に着くと、膝にバックを乗せたままぼんやりと窓の外を見た。
グラウンドでは、白いユニフォームに身を包んだ坊主頭の野球部員たちが列を成しながらストレッチをしている。
汗を流しながら目標に向かって一心不乱に打ち込む姿は、情熱を失い枯れ果てた俺の目には、痛むくらい眩しく映る。
俺も少し前までは“あちら側”の人間だった――。
外の景色に気を取られていたのに加え、爆音が外界をシャットアウトしていたから、まったく気づかなかった。
目の前にいつの間にか迫っていたその人の存在に。
いきなりヘッドホンをずらされ、俺は小さく肩を揺らして顔を上げた。
するとそこには声の主である小坂が、今日も爪の先まで手入れの行き届いた完璧な身なりで立っている。
その顔には楽しげな笑みを乗せて。