【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
小坂が俺を連れてきたのは、駅の近くにあるカフェだった。
「じゃん! ここです!」
「あ、知ってる」
外観は目にしたことがあったものの、中に入るのは初めてだ。
クラスの女子が「おいしい」と話しているのを聞いたことがあるし、ずっと気になってはいたものの、さすがに男ひとりで入店するのは人目が気になって憚れていたのだ。
「本当?」
「でも入ったことはなくて、ずっと入ってみたかったんだ」
「やっぱり! 入ってみよ!」
意気揚々と木の扉を開けた小坂に続いて、小洒落たカフェに足を踏み入れる。
こぢんまりとしておしゃれな店内に、コーヒー豆を煎った香ばしい匂いが充満していた。
小坂はきょろきょろと店内を見回しながら、「いいねぇ、いい雰囲気だねぇ」と弾んだ声をあげている。
俺の些細な一言にも喜んでくれるように、小坂はきっと、日々の小さな気づきを幸せに変える天才なのだと思う。