【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「おいしい?」
「ああ、おいしい。とっても」
俺が食べる様子を、小坂は肘をつき楽しそうに眺める。そして。
「榊くんの笑顔、好きだなあ」
と、感情が声にじんわり染み入るようにそう呟く。
「俺、笑ってたか?」
思いがけない指摘に、俺は右の頬を触れてみる。
たしかに表情筋が持ち上がっている。まさか。
「笑ってたよ。とろけてた」
「……恥ずい」
今度は頬が熱くなっているのがわかる。
笑っていた事実に対してもそうだれど、都合よく切り取られた“好き”という言葉が遅効性の毒のようにゆるゆると甘く俺の心を侵してくる。
笑ったり赤面したり、そういう人間らしいことができる自分に驚かざるを得ない。
空っぽになって表情を失い、余計な感情なんて手放したはずだったのに、こんなふうに動揺するのはいつぶりだろう。
赤い顔を見られないように腕で顔を隠し、ふいっと視線をそらすけど、小坂のにまにまとした視線は俺を離してくれない。
「ふふ、照れてる」
「やめろって……」