【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「でもわかるよ。甘いものって世界を救うもんね」
「それは言えてるな」
「ケーキなら、私100個は余裕かも」
「まじ?」
「うん、割とまじ」
「じゃあ小坂に、これやるよ」
小坂に差し出したのは、一口だけ手をつけたショートケーキ。
「え?」
「なんか満腹ぽいから、小坂、食べてくれないか?」
すると小坂は、驚きと戸惑いが半々に入り混じったような表情を浮かべた。
「でもイチゴものってるし……」
「やるよ、イチゴごと」
「もしかして……私が悩んでたから、ショートケーキにしてくれたの?」
「いや……ばれると、かっこつかねぇな」
頬をかきながら、苦笑を浮かべる。
「でも小坂に食べてもらえたら、嬉しい」
すると小坂は、ばっと両手で顔を覆った。
そしてぐすっと鼻をすする小坂に、俺は慌てる。
「そんな、ケーキなんかで……」
食べかけのケーキでそこまで喜んでもらえるなんて。
こんなことなら、ケーキくらい何個でも買ってやったのに。
「ケーキも嬉しいけど、純粋にね、榊くんの優しさが嬉しいの」
隠した顔の向こうで、湿気を含んだ声で小坂がつぶやく。
「君は優しさを手加減してくれないからなぁ。……ありがとう、榊くん」
ありがとう、なんて。君はおかしい。
こんなにも豊かな感情をもらって、お礼を言うのは俺の方なのに。