【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
*
カフェを出た俺たちは、小坂の先導のもと、行き先は伝えられないままどこかへと向かって歩いていた。
大通りから一本外れただけで、ひとけも車通りも一気になくなる。
街中から離れるにつれて、肺の中に入ってくる空気が澄んでいくように感じる。
カフェに入る前は太陽が空でその存在を主張していたのに、いつの間にかその役目を終えようとしていた。
「どこに行くんだ?」
「ふふ、内緒」
なだらかな坂をずっと上っているというのに、小坂の足取りは軽やかだ。
逆に体育くらいでしか運動していない自分の方が、息があがっている。
じんわりと汗もかいてきた。
どのくらい歩いただろう。
木々が織りなすトンネルを抜け、坂を上りきって高台に到着した頃、小坂がようやくぴたりと立ち止まった。
「着いた……! 榊くん、見て!」
「うわ……」
小坂が指さす方を辿るようにして振り返った俺の口から、思わず感嘆の声がこぼれ落ちる。
視界に飛び込んできたのは、目が痛くなるような夕焼けだった。
息を呑む。
こんなに綺麗な夕焼けを見たのは初めてだった。