【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ




カフェを出た俺たちは、小坂の先導のもと、行き先は伝えられないままどこかへと向かって歩いていた。

大通りから一本外れただけで、ひとけも車通りも一気になくなる。

街中から離れるにつれて、肺の中に入ってくる空気が澄んでいくように感じる。


カフェに入る前は太陽が空でその存在を主張していたのに、いつの間にかその役目を終えようとしていた。


「どこに行くんだ?」

「ふふ、内緒」


なだらかな坂をずっと上っているというのに、小坂の足取りは軽やかだ。


逆に体育くらいでしか運動していない自分の方が、息があがっている。

じんわりと汗もかいてきた。


どのくらい歩いただろう。

木々が織りなすトンネルを抜け、坂を上りきって高台に到着した頃、小坂がようやくぴたりと立ち止まった。


「着いた……! 榊くん、見て!」

「うわ……」


小坂が指さす方を辿るようにして振り返った俺の口から、思わず感嘆の声がこぼれ落ちる。


視界に飛び込んできたのは、目が痛くなるような夕焼けだった。


息を呑む。

こんなに綺麗な夕焼けを見たのは初めてだった。
< 49 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop