【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
高台に上った今、あたりには高い建物がなくて、ここが一番高い場所だった。
視界を遮るものがない。
なだらかな山と山の間に沈みゆく太陽が、最後の力を振り絞るように世界を照らしている。
地平線には燃えるようなオレンジが滲み、上空にいくにつれて、水色と薄紫、ピンクが混ざり合っていく。
目の前にあるはずの景色は、現実味がない。
まるで神様が丹精に丁寧に描き上げた絵画のようだ。
一瞬として同じ景色は存在しない。
刻々と変化を続け、今目の前にある景色は、もう二度と繰り返されない。
そう思うととても儚く、けれどだからこそいっそう美しく思えた。
複数の水彩絵の具がグラデーションとなった大きなキャンバスに、飛行機が白いチョークで一本の線を鮮やかに引いていく。
レールなんてないはずなのに、飛行機の軌跡はぶれることなくまっすぐだ。
「ここ、私の秘密の場所。榊くんにプレゼント!」
まるでサプライズが成功した子どものように、小坂は楽しそうに笑う。
そんな小坂の笑顔も輪郭も、夕焼けに彩られている。
目を突き刺すほどに眩しかった夕焼けが、徐々にじんわりと目になじんでいく。
一気に疲れと汗が引いていく。
……なんでだろう。
無性に目の奥が熱くなるのは。
「どう?」
「綺麗すぎて……声が出なかった」
正直な言葉がぽろりとこぼれる。