【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「小坂の目は綺麗だな」
「え?」
「こんな景色が映ってるなんて」
心も目も綺麗な小坂の隣にいると、曇っていた俺の目も視界がクリアになって景色が美しく見える。
そして空っぽだった心も、豊かになったような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
すると小坂は、唇に微笑を乗せたままゆるゆると首を振る。
「そんなことないよ。榊くんと一緒だから、世界はこんなに綺麗なんだよ」
俺は返す言葉につまった。
いつだって小坂は俺には身の丈に合わない大層な言葉をくれるから、受け止めきれなくて持て余す。
その横で小坂は、空に向かってしなやかな両腕を伸ばした。
そして息をひとつ吐き出す。
「なんだかさ、息ができる気がしない?」
「……たしかに」
伸びをする小坂に俺は同調する。
そうして小坂にならって深呼吸をすれば、澄んだ空気が肺を満たす。
ようやく人間らしく呼吸ができた気がする。