【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「生きてると狭い世界の中で肩肘張っちゃって、深呼吸するのも空を見上げるのも忘れちゃうんだよね」
小坂の言うことはよくわかる。
深呼吸をするのも、空を見上げるのも、生きるだけで余裕がなくていつの間にか忘れていた。
それから小坂は俺の方を振り返った。
その顔を、夕焼けの陽光が淡く映し出していた。
「でも疲れた時とか息苦しくなった時は、こうして空を見上げてね。そうやって自分の心を休めてあげて」
いつもより優しく、いつもより凛とした切実さをもって響いた小坂の声が、耳の奥で反響する。
なぜだか俺はそれを、いつまでも大切に自分の中にしまっておかなければいけないような気がした。
もう一度夕焼けに目を移す。
雄大な景色を前にしていると、自分がちっぽけな存在であることを思い知る。
けれどそれと同時に、だれもが空を見上げることしかできない。
空から見れば人間はみなちっぽけで、同じところに立っているのだ。
空はだれにも平等だ。