【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
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「まだ高校1年生とはいえ、自分の進路と向き合うことは大切なことです。提出は再来週の月曜日ですが、記入できた人から提出してもらって構いません」
ミーンミンミン……。
窓の外で、せわしなく鳴く蝉の声が輪唱を奏でている。
それに重なるのは、いつもより粛然とした担任の声。
俺は手元のプリント用紙に視線を落とした。
先ほど配られたばかりの進路希望調査票だ。
そこには第一志望から第三志望まで記入する欄が設けられており、なにも書かれていない真っ白な空欄がやけに大きく見える。
ぺらぺらな一枚の紙のくせに、目的地も決めずふらふら歩いていていい歳ではもうないと釘を刺してくるようだ。
……けれどこの進路希望調査票、どこかで見た覚えがあるのは気のせいだろうか。
朝の悪夢に続けて突き付けられた現実に、俺は頭を抱えたくなった。
本当だったら、プロのバスケットボール選手になりたかった。
それしか考えず、脇目もふらず一心不乱に努力を積み重ねてきたし、結果だってついてきていた。
それなのにまるでプラグを抜いたみたいに突然ぶちっと余韻もなくその道を断たれてしまった。
目的地を失った旅路の行く先は、出口のない暗闇。
自分が今どこを歩いているのかわからないまま一日一日を惰性で生きているというのに、将来のことを考える情熱なんてない。
苦く重い感情で進路希望調査票を睨みつけていると、いつの間にかSHRが終わり、教壇に立っていた担任の姿はなくなっていた。
SHR明けの休み時間は、もちろん進路希望の話題でもちきりだった。
都内ではそこそこの進学校であり、ほとんどの生徒が進学を選択する。
そのため教室のあちこちから、聞いたことのある大学名が飛び交っている。