【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
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1日のすべての授業が終わると、クラス中が一斉に解放感に包まれた。
小坂に俺の1週間を預けて2日目。
今日は小坂から、ご馳走するから夕飯を一緒に食べようと言われている。
場所は、家族の帰りが遅い俺の家だ。
常に人に囲まれている彼女が誘うのがどうして俺なのか、彼女の意図はいまだにまったく読めない。
けれど1週間を預けると約束してしまったし、なにより断る理由がなかった。
いそいそと教室を抜け出して待ち合わせ場所の校門に着くと、小坂の姿はまだない。
今日は俺の方が早かった。
教室を出る時、女子から声をかけられている小坂の姿を目撃したから、きっとまだ来ないだろうと予見し、俺はヘッドホンをつけた。
夕方の人通りは忙しない。
足早に先を急ぐ人間がいれば、顔を寄せ合って歩く男女もいる。
その中で待っている相手がいるというのは、なんとなくくすぐったくもいいものだった。
すると間もなくして、遠目に小坂の姿を見つけてヘッドホンを外す。
ここからだとだいぶ小さく見えるけど、間違いない。
思ったよりも早い登場に、話を早く切り上げてきてくれたのだろうかなんて、そんな浮かれた考えを一瞬でもしてしまった自分を心の中で戒める。
大勢の人間の中で、小坂にだけ色がついて見える。
小坂を見つけた途端にじんわり広がる安心感はなんだろう。
まるで拠り所を見つけたみたいな。
小坂は俺に気づくと、軽く手を上げ白い歯をこぼした。
そしてこちらに向かって駆けてくる。
俺も軽く手を挙げて応え、歩み寄る。
「待った?」
「いや、待ってない」
「じゃ、さっそく行こっか。まずは買い出しから」
「ああ」