【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
手のひらいっぱいが、小坂の温もりに包まれる。
優しく大切に触れられていることが伝わってくる握り方だった。
それしても小さい手だ。
小さくて細くてすべすべで、なぜか庇護欲のようなものをかきたてられる。
そんなことを握りしめた手から感じ取っていると、隣で小坂が口を開く。
「榊くんの手、冷たいね」
「ああ、いつも冷えてるんだ」
「知ってる? 手が冷たい人は、心が温かい人なんだって」
小坂は変なことを言っている。
俺はすぐにその矛盾に気づいた。
「それじゃおかしいだろ。俺より小坂の手が冷たいなんて」
すると、隣からふはと吹き出す声が聞こえてくる。
「可愛いなあ、榊くん」
「え?」
「こっちの話ー」
小坂は、同年代の高校生とすれ違っても、帰宅途中の小学生にじろじろ見られても、繋いだ手を離そうとはしなかった。
時折ぶらぶら揺らしたり、繋いだ手を繋ぎなおしたり。
この状況を楽しんでいるようにも感じられて。
むしろ俺の方が人目を気にしているほどだった。