【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
そうしてふたりでの夕食作りが始まった。
カレーを食べることは好きだけど、作った経験などなく、スーパーに引き続き小坂の指示通りに野菜を洗っていく。
今日はとことん小坂先導だ。
それにしても小坂は本当に手際がいい。
普段から家事をしているのだろうということは簡単に察せられた。
「次は野菜を切るんだけど、榊くん、やったことある?」
「ない」
包丁を掴んで即答すれば、小坂が眉を下げて笑って、俺の背後に立った。
そして背後から手を回し、俺が包丁を鷲掴みにする手に自分の手を重ねる。
「包丁はこう持つんだよ」
小坂が俺の手を掴み、慣れた手つきで包丁を扱う。
するとまるで魔法にかかっているみたいに、サクサクと野菜が切れていく。
まるで後ろから抱きしめられているかのような距離感に、顔が熱くなった理由はわからない。
けれど顔を見られていなくてよかったと、そう思った。