【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
ただ縋りたくて、俺は小坂の背に手を回す。
そしてほだされるように、心の奥底にしまいこんだ一番柔い部分が露わになる。
「でも俺には価値なんてない……」
すると、まるで消えゆく俺を離すまいとするかのように、強く抱きしめられる。
「価値なんて、そんな難しいこと考えなくたっていいんだよ。優しいところ、隣にいると落ち着くところ、笑うとくしゃっとなるところ、努力家なところ、綺麗なものを綺麗って思えるところ、たまに可愛いところ、全部知ってる。榊くんにはこんなにたくさんいいところがあるんだよ。これだけで充分でしょ?」
「小坂……」
認めてほしかった。
ここにいてもいいよって言ってほしかった。
寄り添ってほしかった。
それだけだった。
目の奥がじんわり熱くなって、目を覆った膜が視界をぼやかせる。
そしてそれはすぐに大粒の滴となって、頬を伝う。
風にさらされ冷えた体に触れる涙の熱は温かくて、生きていることを妙に実感する。
「榊くんがもがいてること、私はちゃんと知ってるよ。もがいてもがいて、懸命に生きてる。ゆっくりでいい。立ち止まっても、間違ってもいい。だから榊くんも自分を認めてあげて。榊くんの人生は、榊くんだけのものだよ」