【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
すると凪いだ湖の水面のような静かなトーンで彼女が切り出す。
「そんな優しい君には死んでほしくないよ」
切実さをはらんだ眼差しで、彼女は俺を見つめる。
俺はなぜだかわからないけれど、この場とこのタイミングにそぐわないことを考えていた。
まるで映画のワンシーンようだ――なんて。
それはあまりに、目の前の彼女が綺麗だったから。
光の粒のベールを纏い、まっすぐな瞳の彼女は、女優のようだ。
そんな映画の花形である女優が、モブにすらなり得ない俺を見つめているなんて、変な状況ではあるが。
「でも君は、また自分の命を捨てようとするでしょう?」
彼女の率直な問いかけに言葉を詰まらせる。
正直に言ってしまえば答えはイエスだ。
こんな命、いつでも捨てることは惜しくない。
今日のような衝動に駆られ、突発的に命を捨てようとすることはあるだろう。
だって俺はもう空っぽの抜け殻なのだから。
こんな世界に縋りつく理由も意味もない。