【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
風変りな質問に、俺は考え込むように視線を斜め上へと彷徨わせた。
「んー……、考えたことないな」
幽霊だとか宇宙人だとか目に見えないものの類は、基本的に信じていない。
朝のニュースでやっている星座占いだけは毎日チェックし、一喜一憂してしまうけれど。
「じゃあ、生まれ変わったらなにになりたい?」
「俺は、バスケ選手か、花屋になりたいかな」
「バスケ選手はわかるけど、花屋?」
「今の俺は怖がられることが多いけど、たくさんの人の心を癒して笑顔にさせられるような、そんな大人になりたかったんだ」
今まで思ったことはあっても、だれかに話したことなんてなかった夢の話。
自分のしまい込んだ本心を打ち明けるのは恥ずかしくて照れくさい。
すると小坂は俺の言葉を受け取ったように小さく頷き、それから口元を緩めて微笑んだ。
「なんか、榊くんらしい」
“榊くんらしい”――それは彼女にとってはなんてことない言葉だったのかもしれないけれど、俺は妙に嬉しかった。
小坂は表面だけではなく、俺の本質を見ようとしてくれる。
俺のことをわかってくれている、そんな実感がぽっと火を灯したように胸を温かくした。