【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「小坂は?」
今度は俺がそう問いかけると、小坂はもう答えが心に決まっていたというように、まっすぐにこちらを見上げてきた。
「もし生まれ変わったら、私はまた榊くんに会いにくるね」
それはなんの確証もない、絵空事の口約束。
けれど小坂が言うと、本当に生まれ変わった世界で会いに来てくれるような、そんな感じがする。
「俺も。小坂に出会える人生がいい」
どんな家に生まれたとしても、どんな職に就いていたとしても、小坂が隣で笑ってくれて、なんてことないことで小坂と笑い合う、そんな人生がいい。
その時。反対側のドアが開き多くの人たちが乗り込んできて、その波に押しやられそうになった。
けれど、俺の正面には小坂がいる。
小坂を潰さないようドアに両手をつき、その中に小坂を囲ってバリケードを作る。そして。
「大丈夫か?」
安否の確認のため視線を落とした時、上目遣いでこちらを見上げた小坂と視線がばちっとぶつかり合った。
俺は予想よりも接近していた小坂との距離に、はっと息をのむ。
驚きのせいか電車の揺れのせいか、心臓が大きく縦に揺れた。
「ありがとう」
まっすぐに俺を見上げてくる瞳には、じんとした熱がこもっていて。
今日の小坂はいつにも増して攻撃力が強い。
なんでかわからないけれど、俺は自分の心に危機感を覚えたのだった。