【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
雪崩のように降りる人々に押し出されるようにして電車を降りる。
すると駅を出てすぐ、夏祭り仕様に衣替えした街並みが俺たちを出迎えた。
行儀よく等間隔で飾り付けられた提灯に、所狭しと並んだ色とりどりの屋台。
忙しなく声が飛び交う通路は、浴衣を着た人間で溢れていた。
みな心が浮ついているのか空気が賑やかだ。
小坂の提案で、花火が打ち上がるまでの時間を、屋台を見ながら過ごすことにした。
まず始めに立ち寄ったのは、フルーツ飴屋。
小坂が「かわいい~!」といつもより高い声で興味を示し、足を止めたからだ。
たしかにそこに並ぶのは、女子が好きそうなカラフルなフルーツ飴たち。
テカテカの飴でコーティングされた大きな果実たちは、宝石のようだ。
「これ、買ってもいい?」
「ああ。もちろん」
「やった! うわ~、どれもおいしそう……」
真剣な眼差しで悩んだ末に小坂が選んだのは、いちご飴。
それを手にした小坂は、子どものように無邪気に笑い、それからさっそく舌を出して舐める。
「うまい?」
「うん! とっても。榊くんもほら、口開けて」
そう言って小坂が、ふたつ入りだったいちご飴のもうひとつを背伸びして差し出してくる。
俺は反射的に口を開けた。
「あーん」
小坂の声と共に、口の中に甘い飴の味が広がる。
「どう?」
「甘っ。でもうまい」
「ふふ、よかった」