【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
ひしめくように並ぶ屋台を順に見ていると、不意にシャツの裾をくんっと後ろから引かれた。
そこで俺は初めて、小坂が立ち止まっていることに気がつく。
小坂はまるで目を奪われたかのように、射的の屋台を見つめていた。
「榊くん、私、あれやりたい……!」
「射的か?」
「うん。あの景品のペンダント、榊くんに似合うと思って」
小坂が指さしている先には景品が並んでおり、ぬいぐるみやおもちゃの中に、「2等」の札がついている羽のペンダントがあった。
「俺に?」
意気揚々と屋台の店主に代金を渡し、射的銃を受け取る小坂。
まさか俺のために獲ってくれようとしているなんて思いもしなくて、一瞬反応が遅れてしまう。
いつだって小坂は俺の想像を超えてくるから敵わない。
その間にも小坂は、射的銃の照準を合わせている。
正面には赤い布で覆われたひな壇があり、そこに「1等」「2等」「3等」などと書かれた紙の的が並んでいる。
そうして撃った的に書かれている賞の景品と引き換えられるという仕組みらしい。
「今獲ってみせるからね」
そう言って小坂が一発目を撃った。
2等を目指して目にもとまらぬ速さで撃たれた木のコルクは、2等の的を少し外れてひな壇に当たって落ちた。
「惜しい」
いつの間にか息を止めて力がこもっていたらしい。
吐き出した息と共に思わず言葉がこぼれる。
「あ~、残念。狙いはよかったんだけどね~」
店主のおじさんが、次のコルクを銃にセットしながら笑う。
1回ひとり2発まで。
チャンスはあと1発だ。