【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
太陽が少し目を離したあいだに、西へ移動している。
太陽が一日の役目を果たし、その姿を消そうとしている頃。
小坂が「花火が見える穴場がある」と言うので、俺たちは花火があがる時間に合わせて移動をしていた。
屋台は充分満喫したから、次は花火だ。
穴場と言うだけあって、人通りの少ない山道を登った先にあるらしい。
車も入ってこられないような細い道を、小坂に着いて登っていく。
歩きながらふと、小坂が夕暮れを見せるために連れて行ってくれた高台を思い出していた。
あの時もこんな道を、こんなふうに小坂の案内で歩いたっけ。
そうしているうちに坂道が終わり、先の見えない階段が前に立ちはだかった。
「ふう……、あと少し」
「足、大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
俺の問いかけに小坂は笑うが、いつもより力がない。
無理して笑っているというのは、一目瞭然だった。
浴衣姿で、そのうえ慣れない草履の小坂は、スニーカーの俺なんかよりずっと歩きにくいだろう。
その足でこの階段を登りきるなんて無茶だ。