【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「おぶる」
「えっ、そんな! 大丈夫だよ!」
小坂の前にしゃがみ込み背中を差し出すけれど、小坂は驚いたように拒む。
「だいぶ疲れが溜まってるんだろ。俺なら大丈夫だから」
「でも悪いし……!」
「ほら、早く」
一進一退の押し問答が続き、最後の一押しをするように俺が急かすと、「じゃあ……」とおずおず小坂が俺の背中に乗ってくる。
「ねぇ、やっぱり降りようか? 重くない?」
「なに言ってるんだよ。俺は男だぞ。全然重くない」
華奢な小坂を軽々とおぶって、階段を登り始める。
小坂の存在を近くに感じて、なぜか胸がくすぐったい。
とはいえ、バスケ部で鍛えてきた足腰もブランクがある。
階段の中盤あたりに差し掛かったところで、さすがに足に乳酸が溜まってきた。
けれどそれを悟られないよう、ゆっくり、そして着実に階段を登っていく。