エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む

 そして同時に否定する。

 外交官の彼に、私がふさわしいとは到底思えなかった。自分が他人より劣っていることは、この国に来て母とララのふたりにさんざん思い知らされてきたから。


 それでも諦めきれなくて、図書館のパソコンで日本人のブログを探したことがある。なに馬鹿なことをしているんだろ、と思いながらも見つけた、外交官の妻だという彼女のブログには、こうあった――『語学が堪能で容姿が整っていることはもちろん、日本文化にも精通しておかなければなりませんし、他の方とのお付き合いも考えると最低でも◯◯大学くらいは卒業しておかねば夫の出世に影響が出るでしょう。つまり、才色兼美でようやく外交官妻になれるスタートラインに立てるのです』

 私は肺から思い切り空気を吐き出した。
 だよね、分かってた。

『……ていうか、そもそも綾城さんが私のこと好きかもとか思っちゃったのが思い上がりだよねえ』

 苦笑しながら、泣きたくなった。
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