エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
彼から離れるのは簡単だった。
唯一のつながりだったレストランは閉店している。ならば、もう図書館へ行かなければいい。電話に出なければいい。
そのうちに、体調不良に気がついた。真っ青になる私を、おばあさまは抱きしめて――そうして東京へ帰ることになったのだった。
「カノコ、よく聞いて。あの人たちのそばでは、赤ちゃんを幸せにできないわ」
ぼろぼろと泣く私の両手を握りしめて、おばあさまは言う。
「任せて。あの守銭奴たちにバレないように隠しておいた資産があるの。少しだけれど――東京へ行きましょう。それくらいはあるわ。あなたは幸せにならなくちゃいけない」
おばあさまもまた、泣いていた。
「老い先短い、このわたくしを幸せにしてくれたカノコ。今度はわたくしがあなたを守るわ」