エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
2(side勇梧)
夏乃子が消えた。
あの日まで、笑っていたのに。
伝統的なプディングを作ってくれた。祖母から教わったのだと――。
翌日から連絡が途絶えた。
最初は連絡を待った。
けれど、帰国が近づくにつれ気が急いて――必死で彼女を探し回った。
とっくに閉店し今はインド料理屋になっているかつての日本食レストランに足を運び、恥も外聞もなく知人友人の日本人コミュニティに情報を求め、少しでも時間が開けば図書館や公園を歩き回った。ストラッドフォードへも足を伸ばして――。
帰国する二日前、とうとう大使館のシステムに不正にログインすることを決意した日、俺はついに夏乃子を見つけた。
あのアジア系スーパーの裏手で、「かっこいーなって」と夏乃子が言っていた例の店員、その彼に抱きしめられているのを、見つけた。
「あ……」
無様だと思った。
孕ませてやろうとすら思った、一度は手に入ったと錯覚した彼女――。
俺は選ばれなかった。
ただ、それだけ。