エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
行かなくていいわよ、と止めるおばあさまに「一度だけ」と振り切って準備にやってきたのは、あまりしつこくされて家まで来られても困るからだった。
私と慶梧、おじいちゃんとおばあさま。
穏やかな暮らしを邪魔されたくなかったのだ。
「ほんっっとにきちんと準備してよね! 大事な人が来るんだから」
「大事な人?」
「そう! その人に望まれて、あたし日本に来たの。外務省のエリートよ」
「外務省……? イギリスの?」
「日本人よ。でもとってもイケメンなの! あたしにぴったり。お母さんにも挨拶してくれているんだから」
よくよく話をきけば、義父の絵画コレクションを見に来ただけなのだろう……とは思うけれど、こうなるとララは聞く耳を持たないだろう。
外務省、イケメン、と聞いて勇梧さんを思い浮かべたけれど、彼はロンドンにはいないはずだ。そこに安堵した。
だってララは〝欲しい〟と思ったものは、必ず手に入れるのだから。
その人だって、いずれララのものになる。