エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
だから「その人」が勇梧さんだと知って――私は身体の震えが止まらなかった。
ララが暮らす高級タワーマンションの最上階、そのセカンドキッチンで過呼吸になりそうなのを何度も押しとどめた。
たくさんの人の、楽しげで華やかな会話が聞こえて来る。
勇梧さんはララに花束を用意してきていた。大袈裟に喜ぶララの声。
私は文句を言われるのを覚悟で、そっとマンションを抜け出した。料理は全て作ってある。メインからデザートに至るまで……。
ララは私から、どれだけ奪えば気が済むのだろう?
私はあのふたりの結婚式に行かねばならないの?
ああでも、逃げたのは私。
ふさわしくないと逃げ出した――。ララは?
ララならふさわしいの……?
帰って来るなり塞ぎ込んで泣いてしまった私に、おばあさまもおじいちゃんも優しかった。慶梧ですら心配して私の膝によじのぼり、小さな手のひらで涙を拭ってくれたくらいだ。
「ごめんね、慶梧。ママ、しっかりしなきゃね」
この子だけは守る。
なにがあろうと、手放さない。奪われない。