エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
4(side勇梧)

 向日葵の咲く、小さな一軒家だった。濡れ縁のある古い日本家屋、その門扉にかけられた「筒井」という表札に、さまざまな感情が昂る。

 ――やっと、会える。

 震える指先で呼び鈴を押した。インターフォンというより、呼び鈴という名前がしっくりくる年季の入ったそれ――。緊張しすぎて、何度も押してしまった。
 カラカラと引き違い戸が開く。
 夏の陽で、顔ははっきりとは見えない。けれどすぐに分かった。この二年、何度も頭に思い描いていた彼女――。

 愛おしい人が立っていた。

 風が吹き、向日葵の花びらが揺れる。黄金色に真夏の太陽を反射して、蝉時雨が降り注ぐ。
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