エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
6
午後の金色の陽射しが入る俺のマンションのリビング。そこでぱらぱらと本をめくっていた夏乃子が突然泣き出したから、俺は大慌てで彼女の側にしゃがみ込む。
少し波長が長くなった陽射しに、伸びたふたつの影が重なる。
「夏乃子? どうした」
「ゆ、勇梧、さん」
夏乃子がしゃくりあげながら言う。
「ごめんなさい……ちゃんと、整理して伝えるから」
「夏乃子?」
「だから、待っててくれますか? 私が過去から抜け出すのを」
夏乃子が顔を上げる。
「きっと、すぐだから――あなたがいてくれるなら」
潤んだヘーゼルの瞳が、真っ直ぐに俺を射抜く。自然と頷いていた。
「ああ。愛してる。いつまでだって待ってる」
そばにいて、手を繋いで。
だからなにも心配しないで欲しい。
素直に俺の横にいたいと言って欲しい。
「ずるいです……そんなふうに、わがままにも優しくしてくれるだなんて」
ぎゅ、と夏乃子が自分のシャツの胸を握った。
「心臓がぎゅうってなります」
「俺はいつもそうなってる」
自然と唇が重なった。