エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
ああ、〝この人だ〟と思う。心の底から。――彼女がいなければ、俺は満たされない。決して幸福になれはしない。
何度か唇を重ねる。彼女の体温を感じる。――夏乃子がここにいる。
俺の腕の中に。
そっと抱き上げると、一瞬みじろぎしたものの、夏乃子は抵抗しなかった。そのまま寝室のベッドに運ぶ。そうして横たえ、顔の横に手をつき覗き込む。
「いいか?」
夏乃子は頬を真っ赤に染めて、そのままこくんと頷いた。子供を産んだとは思えないほどに純情――それはそうだ、彼女が肌を許したのはあの日限りだったのだから。
首筋に唇を寄せると、くすぐったげに夏乃子が身を捩る。匂い立つ色香に頭がくらくらした。むしゃぶりつき、甘噛みする。愛おしすぎて食べてしまいたくなる。胸が痛んで訳が分からなくなる。
「愛してる」
そう告げて、彼女の服を全て脱がせた。さらさらと衣擦れの音がするたびに、恋情が暴走しかける。優しく丁寧に愛でたいのに、押さえつけて抱きしめて欲望のままに彼女を手に入れたくなってしまう――。
「勇梧さん?」
微かに震えた声で、夏乃子が俺に手を伸ばす。嫋やかな指先が、俺の頬を撫でた。
「どうしたんです……? 苦しそう」
「君が好きすぎて辛いんだ」
正直に答え、自分も服を脱ぐ。邪魔だった。彼女と俺を隔てるもの全てが、煩わしく厭わしい。
お互い生まれたままの姿で、シーツの上で抱き合う。柔肌の熱さ、なめらかさが劣情を掻き立てる。
「愛してる」
何度もそう囁きながら、キスを繰り返す。
腕の中、夏乃子が熱い息を吐いて──
ああ、ようやく、満たされる……
夏乃子と離れている間、ずっと自分がすり減っていく感覚に襲われていた。
目減りしていた自分が、少しずつ満たされていく。